- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/11/22
- メディア: 文庫
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kitajskaya.hatenablog.com
さて今回紹介するのは、テレビドラマ“ガリレオ”シリーズや映画“白夜行”の作者でミステリー作家の東野圭吾さんの長編小説“ナミヤ雑貨店の奇蹟”です。私は全く知りませんでしたが、この“ナミヤ雑貨店の奇蹟”、実は去年の9月に映画にもなっていました。
この小説を読もうと思ったのも、そうした知名度があったからではなく、先々週に千葉に泊りがけで研修を受けに行った際、時間つぶしに本でも読もうかと思い、東京駅のキオスクでたまたま手に取ったからです。実は小説を読むのも、先ほどのブログでも今年の抱負に入れてありました。
この小説は角川書店から出版されており、表紙を飾るノスタルジックなイラストが目を惹いたこともあります。またさすがに作者である東野圭吾さんくらいは、いくら情報に疎い私でも知っていました。ただ東野さんの書いた小説はまだ読んだことがありませんでしたが、直さすがに直木賞を受賞されているのだから、つまらないわけはないと思い、購入して読むことにした次第です。
読み始めると、さすがベストセラー作家、読む人のツボを心得ているというか、宿泊先のホテルで一気に読みました。読んでいるうちに何というのか、目頭に熱いものがこみあげてくるというか、そんな感じの感動大作といった作品でした。
あらすじは、下手な私の紹介文より、巻末にあるレビューを参考にした方がわかりやすいので、抜粋します。
悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていたざかっ点だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・波矢雄治に代わって返事を書くが・・・・・。次第にあきらかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?
あまり突っ込むと、ネタバレになるので詳しくは書けませんが、東野さんはミステリー作家だと思っていたのですが、こうしたファンタジー小説も手掛けられているとは思いませんでしたし、また感動を呼び起こす手法も見事なものだと感銘しています。悪事を働いた人が悩みの相談に応えるという荒唐無稽の設定も、その後の展開で読者の目を釘付けにするのは、さすが数々の賞を受賞され、今や読みたい作家の上位に君臨する東野さんならではの見事な手法だと思います。
この小説を読んでいるうちに“鬼平犯科帳”の長谷川平蔵の言葉を思い出しました。「悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事を働く」この小説の世界では“鬼平犯科帳”のそれのような凄みは感じることはありませんが、何とはなしに通じるようなものがあるように思えました。
他人の私生活をさらけ出したり、正しい意見が黙殺される社会、また幼子を平気で殺したり、老人を騙しなけなしの財産を巻き上げる、こうした狂った世の中に現代社会はなりつつあります。そうした中、この小説は人生の機微や人の持つ本来の優しさを呼び起こしてくれる、いわば一服の清涼剤ともいえる作品です。世知辛い世の中だからこそ、こうした作品が求められると思いますし、私は見てはいませんが、この小説を読み終えて、もしできることでしたら映画も合わせて視たらより深く感動を受けるのではないかと思います。(いつか地上波もしくはスカパーで放送する日が来ることを心の底から願っています。)