Kitajskaya’s Raccomandazione

このブログでは、私、Kitajskayaが気になったモノを紹介します。私の嗜好はかなり偏っているので、かなりマニアックなものなると思います。また気まぐれなので、更新はまちまちになると思います。 Raccomandazioneとは、イタリア語で「おすすめ」という意味です。

ウルトラマン 光と影

 私が子供の頃の60年代後半から70年代前半、憧れたヒーローはウルトラマンでした。物心ついたくらいに初代のウルトラマンの放映が始まり、初代ウルトラマンウルトラセブンは再放送で何回も何回も見ていました。学校ではよくウルトラマンごっこしていたように思います。小学校3年生だった1971年、ウルトラマンシリーズが再開された時には感激し、放映される金曜日は夜7時までに夕飯を済ませ、1分1秒たりとも見逃さぬようそれこそ食い入るように見ていました。
 今回はウルトラマンに関係する書籍2冊を紹介します。

ウルトラマンの愛した日本 (宝島社新書 422)

ウルトラマンの愛した日本 (宝島社新書 422)

 この本はウルトラマンの眼を通して戦後日本を語る本で、執筆者はウルトラマンタロとなっています。ウルトラマンが放映された1960年代から現在に至るまで、テレビや映画などで登場したウルトラの戦士たちの戦いを振り返るとともにその当時の日本の心象風景をウルトラマンタロウさんが独自の視点で語っています。ウルトラシリーズが放映されてから約50年近くになりますが、この本は戦後の日本社会の変遷を知る意味でも面白い本だと思います。子供の頃、何気に見ていたウルトラシリーズも、その背景には当時の世相が色濃く反映されたと知り、改めて感嘆しました。
 冒頭にウルトラマンタロウさんは、以下のように語っています。

     美しい自然に恵まれていること。
     小さな国土だけれど大勢の者たちが身を寄せ合い、暮らしていること。
     素晴らしい発明をし、同時に、時に愚かしい選択もしてしまうこと。’
     愛し合い、憎しみ合うこと。
     だから、私たちは、君たちのことが好きだ。

 ウルトラマンが登場して半世紀余り、私たちも日本人の気質もも随分変わってしまったと思いますが、これからもウルトラマンに愛される日本であり続けたいものですね。

 前出の「ウルトラマンが愛した日本」が表の世界なら、この「ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗」は華やかなスポットライトの影の部分を白日の下に曝け出したもので、長年のウルトラファンには目に入れたくないかもしれません。著者は円谷プロ創業者円谷英二氏の孫である円谷英明氏。円谷プロは現在、創業家である円谷家と一切の関わりを持っておらず、そうなった経緯を叔父であり三代目社長の円谷皐(のぼる)氏との対立を軸に事細かく記述しています。英明氏は最後に以下のように述べ、塊根の情を吐露します。

 ウルトラマンが泣いている―今にして思えば、現実の世界でウルトラマンを悲劇のヒーローにしてしまったのは、我々円谷一族の独善か、驕りだったのでしょう。

 本書で述べられた円谷プロの経営体質の杜撰さは弁解の余地はありませんが、いい作品を作るためコストに常に悩まされるトップの苦悩は製造現場で働く自分には他人事とは思えず、納得できるところもありました。
 円谷プロは現在大手玩具メーカーバンダイとパチンコ機器製造メーカーのフィールズが主要株主で、現在はフィールズの子会社になっています。経営のごたごたに負けずに常に子供たちのヒーローであり続けたウルトラマン、これからも未来永劫ヒーローであり続け、子供たちの夢を壊さないようしてもらいたい―それが円谷英明さんがこの本に託した願いだったかもしれません。